下枝浩徳さん

双葉郡葛尾村。8月某日、案内された田圃で稲穂が風にそよぐ。「昨年ここで70人が集まって稲刈りしたんですよ」笑顔で田圃を眺める下枝さんに葛尾村のお話を伺いました。

編：震災のタイミングで村に帰ってきたそうですね。

それまで掘削機械メーカーで海外で井戸を掘る仕事をしていました。震災後すぐに帰郷して、近くの町で仕事をしながら仮設住宅に住む村の人達を訪ねたりしていました。震災前から過疎化、高齢化、大きな産業も無い村に突然の原発事故による避難指示。いつ村に帰れるとも解らない中でも葛尾村の人達は昔と変わらない温かさで迎えてくれました。そんな故郷の人々が幸せに暮らしていけるような仕組み作りと人材を育てる団体「葛力創造舎」を平成24年に立ち上げました。

編：平成28年、やっと避難指示が解除されましたね。

千五百人ほど居た村人のうち、帰村したのは現在200人を少し超える位。都市部の人から「この村の復興に力を入れるのは無駄じゃないか」と言われた事もありましたが、都会の考え方にとらわれず、数百人なりのコミュニティを大事にした地域づくりをしていきたいですね。

編：葛尾村の特産物にも力を入れているとか。

昨年から村の住人と村外の学生などのサポーターと協働して米の栽培を再開しました。加工品の甘酒、せんべい、日本酒の製造など新しい特産物にも取り組んでいます。村のお母さん達に郷土料理を教わりながらおもてなしの心も大切にんでいます。たくさんの若者達が葛尾村で復興のお手伝いを経験していくうちに、ここを気に入って移住する人が出てきたらいいですね。この秋から始める予定のゲストハウスもそういう仕掛けの一つ。美味しいものと、心温かい村の人達に逢いに来てください。

　眺めの良い窓から涼しい風が入るゲストハウス