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passion
伝統に創作のエッセンスを。暮らしに彩りを添えるうつわ創り
大堀相馬焼窯元 京月窯 近藤 京子さん


    

 相馬市から車で1時間。福島市飯坂のフルーツラインからほど近い場所に、築130年を超える古民家を再生・改装した建物があります。広い玄関を開けると目に飛び込んでくるのは大堀相馬焼の作品の数々。「近徳・京月窯」第15代目の窯主・近藤京子さんが営む工房兼ギャラリーには、いつも陶器の好きなお客さんが絶えません。近藤さん手製のカップで淹れたてのコーヒーをいただきながらお話を伺いました。

 大堀相馬焼の歴史は約300年前の江戸時代初期の元禄年間までさかのぼり、相馬中村藩士の半谷休関(はんがいきゅうかん)が大堀村(今の浪江町大堀)で焼きものに適した良い土を見つけ、下男に命じて庶民が普段使えるうつわを作らせたのが始まりだと言われています。明治時代に瀬戸や益子などの他の地域との差別化を図る為に創意工夫を凝らし、「走り駒」「ひび模様」「二重構造」の特徴を打ち出して輸出もされ、県内外はもとより世界中から愛される陶器になりました。大堀相馬焼は当初、7名の村民に限って製法を伝承していましたが最盛期には100戸以上の家が陶芸に携わるようになり藩の主力生産物となりました。

 相馬藩から認められた最初の七人衆のひとり、近藤弥ヱ衛門の名跡を受け継ぎました。父親で師匠の徳太郎と一緒に若い頃から陶土に親しみ、家事をしながら窯の作業に従事していました。飾って楽しむ大きな作品や芸術的な作品も焼いていますが、実際に料理を盛り、食事が済んだら洗って仕舞う。庭の花を活ける。そんな日々の暮らしで扱いやすい物を作る事を大事にしています。その上で特別な日の食卓や家の中を彩る、気持ちが上向きになる作品も提案しています。

 震災前は代々浪江町大堀地区で陶作をしていましたが、地震で工房と多くの作品が被害を受け、避難指示で浪江町を離れました。避難所を転々とし、これからどうなるのか先が見えない生活の中で陶芸を続けるか悩んだ事もありましたが「ふるさとの伝統を絶やす訳にはいかない」と新しい拠点を探し、2011年の夏には今の場所にめぐりあって準備をすすめ、12月には活動を再開しました。現在は福島県内の各地で活動している他の窯元とも連携して2020年にオープンした道の駅なみえに隣接した「なみえの技・なりわい館」や、2023年に避難指示解除になった「陶芸の杜おおぼり」で焼き物文化の存続に力を入れています。

 京月窯のギャラリーには大堀相馬焼として特徴的なものから焼き方・釉薬(ゆうやく)の違うオリジナルのうつわやランプシェードなどの作品を並べています。陶芸の杜おおぼりにある登り窯(中国古来より歴史のある焼き方の窯)で焼く作品は労力はかかるけれど仕上がりに独特の魅力がありますね。飯坂の工房では家事や接客が両立出来る電気窯とガス窯も導入しつつ、常に新しい表現に挑戦しています。先日は手工芸作家さんが相談に来られ、うつわ以外の陶芸の可能性も感じられました。昔のように一子相伝にはこだわらず、意欲のある方には技術を伝えたい想いはありますので、先ずは気軽に陶芸の体験にいらしてください。


■近徳・京月窯
福島市飯坂町平野字道南4
TEL 024-542-2818
営業時間9:00〜18:00(不定休)
※陶芸体験は要予約
■Instagram
https://www.instagram.com/kyogetsugama/
■HomePage
https://kyogetsugama.jp/


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